過保護な妖執事と同居しています!
返事をした後、ザクロは髪を撫で続ける。私が再びうとうとし始めた時、ザクロが耳元で遠慮がちに口を開いた。
「あの、昨日一度だけって言っておきながら恐縮なんですが……」
はて? なんのことだろう。不思議に思いながら顔を上げる。ザクロは少し気まずそうに告げた。
「口づけ、してもいいですか?」
「え……」
もしかして、それで遠慮してたの?
私は思わずため息をつく。
「そんなこと、いちいち聞かないの。ザクロは私の恋人なんでしょ?」
「はい。ですが、恋人が具体的にどういうものなのか、私はよく理解できていません」
「へ? 今までの主に恋人の身代わりを望まれたことがあるんじゃなかった?」
「身代わりは望まれましたが、請われるままに振る舞うだけで、私が自発的に何かをしたことはないんです」
はぁ、なるほど。主の望む姿や振る舞いを再現してきただけなのか。私がいいと言わないのに不用意に触れて心が傷ついたら、とか心配してるのかな。
相変わらず過剰に心配性なザクロに苦笑する。
「ザクロは自発的にどうしたいの?」
「もっと頼子に触れたいと思います」
私は微笑みながらザクロの首に両腕を回した。
「じゃあ、そうして。いちいち私の許可をとらなくてもいいから。触れて欲しくないときもあるかもしれないけど、それはわかるでしょ? ザクロとは繋がってるんだから。でもそれで、ザクロを嫌いになったり、私が傷ついたりはしないから」
「はい」
ニッコリ笑って頷いたザクロは、私の腰に両腕を回して引き寄せる。そしてゆっくりと顔を近づけてきた。私は目を閉じてザクロの唇を受け入れる。
昨日よりも長くて濃厚なキスに、とろけそうになりながらふと思った。
初恋のくせに、キスうまいじゃん。
ちょっとだけ、過去の主に嫉妬した。