過保護な妖執事と同居しています!
出張の話を聞いたザクロは案の定、心配そうに眉をひそめた。
「東京って江戸ですよね。そんな船で何日もかかるような遠いところに頼子がひとりで行くのは心配です」
いや、今時、東京に船で行く人はめったにいないから。
「今は日帰りできるの。で、結局離れていられるの?」
「……一日くらいなら私の体調に問題はありませんが、気持ちに問題はあります」
うーん。やっぱりそうか。一応離れていることは可能になったらしい。
でも最近特に、ザクロはいう事を聞かなくなった、というか反論するようになったというか。おまけに心配性は相変わらずなので始末が悪い。
私はなだめるように笑いながらザクロの肩をポンポン叩いた。
「そんなに心配しなくても大丈夫よ、ひとりじゃないし。本郷さんも一緒だから」
「本郷さん?」
少しすねたような表情で私を見下ろしていたザクロがピクリと片眉を上げた。
……目が据わってるよ。え、本郷さんの何がまずかったの?
肩を叩いていた私の手首を掴み、腰に腕を回して引き寄せる。
「彼が一緒ならなおさら心配です」
「え、なんで? 本郷さんならいざという時、私を守ってくれるだろうって、ザクロ言ってたじゃない」
「その点に関しては心配していません。別の意味で心配なんです。だって彼は、頼子に結婚を申し込んだんでしょう?」
あ、そういう意味。ようするにやきもちね。そう気付いて思わず頬が緩む。
そういえばごたついてて、本郷さんの申し込みを断ったこと、ザクロに話すのをすっかり忘れていた。恋人宣言はしたものの、あれから数ヶ月の間ずっと気になってたんじゃないかと思うと少し申し訳ない。