過保護な妖執事と同居しています!


「痛かったでしょう?」
「え、別に気にしてなかった」
「少しお返ししますね」


 そう言ってザクロは私の肩に手を乗せた。ザクロの手が触れた部分が、じんわりと暖かくなってくる。
 お返しするって生気のことだろうか。
 なるほど、これが命の源、生気なんだ。

 少ししてザクロは手を離し、にっこりといつもの穏やかな笑顔を見せた。


「きれいになりましたよ」


 言われて肩に目をやると、赤い痣が跡形もなく消えている。


「あ、ありがとう」


 私はドアノブを握りしめていた左手を離し、ブラウスの前を合わせた。

 その時になってようやく気づく。そういえば、鍵をかけてあったんだ。ノブを回しても開くわけはない。

 ため息と共に奥の部屋へ向かう私に、ザクロは何事もなかったかのように声をかける。


「すぐに夕食をお持ちします」
「うん。ありがとう」


 玄関に立ちこめる醤油の香ばしい匂いに、条件反射でお腹は鳴ったが、精神的にはどっと疲れた。

 どうやら先ほどの唐突な行いは、私の肩に痣ができていたからのようだ。

 そういえばザクロはこういう奴だった。

 私のケガや体調不良に、過剰なほど敏感なのだ。以前、リンゴの皮を剥こうとして指を切りそうになって以来、私が包丁を握ること自体に難色を示す。

 心配してくれるのはありがたいが、先に事情を説明してもらいたいと思う。
 乙女に向かっていきなり「脱げ」はないだろう。やっぱり、どこかズレている。

 もしかして乙女だと思われてないとか?
 別にこちらも意識してはいないが、それもなんだか微妙な気がする。

 ぐったりしながら着替え終わったところに、ザクロが夕食を運んできた。


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