過保護な妖執事と同居しています!
せっかく定時で上がったのに、何もする気になれなくて、私は早々に床についた。
本当は撮り溜めているテレビドラマを見たり、ネットで無料の乙女小説やマンガを見たりしようと思っていた。
昼に思い出した彼が、私にとっては最悪の状態で目の前に現れて、気分は沈む一方だ。
それでもザクロの作った夕食を食べている間は、まだ気持ちが和らいでいた。
けれど灯りを消して布団に潜った途端、またぐるぐると頭の中に彼の姿が浮かんでくる。
私の気持ちが沈んでいることはザクロもわかっているようだ。そしてその原因に触れて欲しくないことも察している。
何も言わずにハーブティーを差しだし、黙って私の行動を見守った。
灯りを消して挨拶をすると、ザクロはいつも姿を消す。気配も消えるので部屋の中にいるのか、外に出ているのかは判断できない。
いつか尋ねたとき、部屋の中にいることも、外に出ていることもあると言われた。
ザクロは眠らない。ずっとそばで見ていたら、私が落ち着いて眠れないだろうという配慮らしい。
今日も暗い部屋の中に、ザクロの姿はない。私が元彼のことにとらわれて、何度も寝返りを繰り返していると、姿の見えないザクロが静かに問いかけてきた。
「頼子、眠れないのですか?」
「ザクロ、いたの? 姿を見せて」
部屋の真ん中にザクロが現れる。そしてベッドのそばまで来て座った。
横になった私を、心配そうに覗き込む赤い瞳と視線が交わる。私は少しホッとして、微かに笑みを浮かべた。
「帰りに頼子が見ていた男性の事が気になるのですか?」
気づかれていたらしい。あれだけ凝視していれば当然か。