過保護な妖執事と同居しています!
「あの人ね、昔つき合ってた人なの」
「恋仲、だったんですね」
「うん。私がいつも仕事が忙しいって言ってたから、おいしいものを食べてストレス発散しようって誘ってくれたのに、仕事が忙しくて行けないって言ったらふられちゃったの」
私は彼の気遣いを無にしたのだ。それまでも何度か仕事のせいで約束を反故にしている。そのたびに彼は「仕事なら仕方ないね」と許してくれていた。
本当は聞きたくもないはずの仕事の愚痴を黙って聞いてくれたし、一緒に食事に出かけると私の食べたいものを優先してくれる。
そういう優しいところが好きだった。けれどいつの間にか、私はその優しさを当然のことと勘違いして甘えていたのだろう。
彼が我慢の限界を越えるまで、私は彼を思いやってはいなかった。今頃気づいても遅すぎる。
破局の原因は自分だとわかって、もやもやとした不快感は消えたけど、今度は情けなくなってきた。
視線を外して黙り込んだ私の頭を、ザクロが優しく撫でる。
ザクロには私の気持ちが沈んでいることが伝わっている。私はわざと、おどけてみせた。
「ごめんね。私が落ち込んでるとザクロがお腹すかせちゃうんだよね」
ザクロは私の頭を撫でながら、口元に少し笑みを浮かべる。
「私は大丈夫です。辛いのなら、泣いてもいいんですよ」
いまさら涙なんか出ない。元々自分が悪いんだし。
だけど、少しだけ甘えさせて。
「私も大丈夫。明日には元気になるから。でも、もう少しだけそばにいて」
「かしこまりました」
そう言ってザクロは、私が眠りにつくまで、優しく頭を撫で続けた。