過保護な妖執事と同居しています!
夕方、夕食の買い出しにザクロと近所のスーパーへ出かけた。支払いを済ませて荷物を詰めるためにサッカー台へ移動する。
並んで袋詰めしている買い物客の隣に、水色の袴に白い着物を着た神職の男性がいるのが見えた。
誰かを待っているのか、サッカー台にもたれて斜め向こうにあるレジの方を見つめている。
白い着物の上には黒いダウンジャケットを羽織り、延び放題になったと思われる長髪をひとつに縛って背中に垂らした姿が、なんだかちぐはぐな印象だ。
神職がスーパーにいることも、なんだかちぐはぐで、私は知らず知らずに凝視していた。
ふと神職の顔がこちらに向く。髪が延びていたし髪色も黒くなっていたので気づかなかったが、懐かしい大学時代の友人に、私は思わず声をかけた。
「清司(せいじ)」
清司はようやく私に気づいて、こちらにやってきた。
「頼子、久しぶりだなー」
「卒業以来だもんね。なんでここにいるの?」
「親戚んとこの神事を手伝いに来たんだ。そんで、今から宴会やるから、酒のつまみ買ってこいって言われて買い出し」
「それでそんな格好してるのね」
清司は私の実家の近所にある神社の息子で、大学を卒業後家業を継いで神職になったと聞いた。
「神事って、お祓いとか?」
「まぁ、そんなとこ」
曖昧な笑みを浮かべた清司が、ふと私の後ろに目をやる。そこにはザクロがいた。
まさかザクロが見えているわけはないので、私は何があるのかと振り向く。
すると、いつもは後ろに控えているザクロが、私の横に一歩踏み出した。
清司を見据えながら、冷ややかな笑みを浮かべて軽く頭を下げる。
「はじめまして。頼子の執事です」
「あぁ、どうも」
はぁ!? なに普通に挨拶してるの!?
私は慌てて清司に顔を近づけ、小声で問い質した。
「もしかして、見えてるの?」
「おまえの横にいる赤毛のイケメン執事のことか?」
信じられないけど、清司にはザクロが見えているらしい。性格は適当な奴だけど、さすがは神職というべきか。
「変わった奴連れてるなぁと思ったけど、知ってて一緒にいるんなら、ま、いいか。別に質(たち)の悪い感じはしないし」
そう言って清司はのんきに笑う。その時、向こうから清司を呼ぶ声がした。
「じゃあ、オレ、そろそろ行くわ。すっげー睨まれてるし」
言われてザクロに目をやると、確かに険しい表情で清司を睨んでいた。
いつも穏和なザクロにしては珍しい。
「また連絡するよ」
笑いながら軽く手を挙げて、清司は連れの女の子と一緒にスーパーを出ていった。