過保護な妖執事と同居しています!
休み明け出社した私は、さっそく清司のメールを開いた。
おまえの後ろにいる奴、その筋の専門家に聞いたんだけど、宿り蛾(やどりが)っていうヤママユガが変化した妖怪らしい。
赤い繭の状態で眠り、人が触れると触れた人間の望む姿で目覚める。そして触れた人間に寄生して生気を糧に活動する。
宿り蛾にとって宿主の願望は絶対で、宿主によってそいつは善にも悪にもなり得るってことだ。
それはザクロ本人から聞いた。
そいつの繭は心に傷を持つ女にしか見えない。宿主の弱った心を癒し、自分に依存させることで絆を強化し、力を得る。
別に宿主に害を与えることはないが、依存しすぎると社会生活に支障が出ることもあるぞ。
まわりから見えないとはいえ、そいつを連れて結婚とかできないだろう?
依存しすぎるなって言われても、もうすでにかなり依存してるよねぇ。
結婚なんて望んでいないし、ザクロと一緒には無理だってわかってる。
私が死ぬまでザクロが一緒なら、依存しようがしまいが同じではないだろうか。
そいつは宿主の命が尽きれば絆が切れて、また繭に戻る。
宿主が生きている限り絆が切れることはないが、依存度が低くなれば、姿が見えなくなり、そのうち声も聞こえなくなるらしい。
まぁ、背後霊のような感じかな。それだと社会生活に支障はないだろう?
くれぐれも依存しすぎるなよ。
清司のメールを読み終えて、私は軽く身震いした。
ザクロが見えなくなるなんて、考えただけで寂しい。
どうやら私は、もう手遅れなほどザクロに依存しているようだ。