過保護な妖執事と同居しています!
今日は坂井くんに呪われているとしか思えない。また終了報告を怠ったのだ。
指導係の私が彼の仕事をチェックしなければならないことは知っているくせに。
昼間注意されたことの仕返しだろうかと勘ぐってしまう。ため息をついた途端におなかが鳴った。
壁の時計に目をやると、すでに八時半を回っている。フロアの奥にある課はすでに全員退社して灯りが消えていた。
ザクロの晩ご飯を思い描きつつ、なんとか仕事を片付けてパソコンの電源を落としたとき、別のフロアに行っていた本郷さんが帰ってきた。
私の姿を見て、驚いたように言う。
「なんだ、まだ残ってたのか?」
「もう帰ります」
帰り支度をする私の机に置かれた書類を見て、本郷さんが指摘した。
「それ、坂井の仕事だろう? 本人はどうした?」
「用事があるとかで、定時で帰りました」
「ったく。しようがない奴だな」
本郷さんは呆れたようにため息をつく。そしてニッと笑いながら私の肩を叩いた。
「よし、一緒に晩飯食いに行こう。奢るぞ」
「ごめんなさい。家に夕飯の支度してきたので」
支度をしたのはザクロだけど。
私が即座に断ると、本郷さんは不満げに顔をしかめた。
「なんだ、最近つき合いが悪くなったな」
「前もって誘ってくれたら、喜んで奢ってもらいますよ。じゃあ、今日は失礼します」
「あぁ。お疲れ」
本郷さんに挨拶をして私は会社を後にする。ビルを出るとザクロが待っていた。
いつものように私の後をついてくる。私は少し振り返って笑顔を向けた。ザクロも笑顔で応える。
そのままいつものように黙って家路についた。