過保護な妖執事と同居しています!
微妙な空気を追い払って、少し顔を赤くした坂井くんがおどけたように敬礼した。
「じゃあ、邪魔者は退散しますので、あとはお二人でごゆっくりどうぞ」
そそくさと立ち去ろうとする坂井くんの首に腕を回して、本郷さんが素早く捕獲する。
「逃がすか。坂井、もう一軒つき合え」
「えー? ぼくより海棠さんの方がいいでしょうー?」
「当たり前だ。海棠、おまえはどうする?」
「あ、私はもう。ちょっと飲み過ぎたので、今日は失礼します」
「そうか。じゃあ、またな」
そう言って本郷さんは、坂井くんを連行したままネオンの海の中に消えていった。
もしかして、坂井くんに妙な噂を立てられないように気を使ってくれたのかな。
本郷さんの気配りに感謝しつつ駅に向かって歩き始める。暖簾の陰からザクロがやって来て後ろに従った。
人影がまばらな駅前大橋の歩道を歩きながら、後ろからザクロが問いかけてきた。
「行かなくてよかったんですか?」
「うん。二次会はザクロとしようって決めてたの」
「二次会?」
「飲み会の後、別のところで飲み直すことよ」
「私と飲み直すんですか? でも頼子、飲み過ぎたって言ってませんでしたか?」
「帰る口実に決まってるじゃない」
実はかなりセーブしていたので、ほとんど酔っていないのだ。その分しっかりちゃっかり食べたけど。
私は少し振り向いて尋ねた。
「ザクロは日本酒がいい?」
「頼子の飲みたいものでいいですよ」
そう言うと思った。けれど、たぶん日本酒の方がなじみのある味だろうと思う。
「じゃあ、日本酒。寒いから熱燗にしよう。駅前のスーパーが夜十時まで開いてるから、お酒と何かおつまみ買って帰ろうね」
「酒の肴でしたら、私が何か作りましょうか」
「いいの。今日はザクロのお休みの日なの。あ、でも最後に締めのお茶漬けを作ってくれたら嬉しいな」
「かしこまりました」
ザクロは嬉しそうに笑って頷いた。