過保護な妖執事と同居しています!
忘年会が終わると、社内は年末年始に向けて一気に慌ただしくなる。世間ではまだクリスマスが残っているが、我が社はクリスマス商戦とは無縁のOA機器販売及びリースを行っている。
どちらかといえば、年賀状の印刷などでプリンタが必要になる年末の方が忙しい。
というわけでクリスマスなどないのだ。と去年までは私も思っていた。けれど今年はクリスマスが待ち遠しい。
なにしろザクロがクリスマスケーキとディナーを用意してくれるのだ。
以前の彼とレストランでディナーを頂いたことはあるが、慣れない高級感に気後れしてあまり楽しめなかった。
ザクロのディナーは家なので、くつろいで頂けるのが一番のメリットだと思う。どんなご馳走が頂けるのか毎日楽しみで、残業も坂井くんの妨害も苦にならないほどだ。
指折り数えて今日はクリスマスイヴ。今日は絶対定時で帰る。そう決意して、朝から仕事の段取りも根回しも万全なのだ。買い物も昨日済ませてある。
ようやく終業のチャイムが鳴り、私はいそいそと帰り支度を始めた。本郷さんはあらかじめ私の予定を知っている。自分より先に帰る私を珍しそうに見つめる坂井くんと本郷さんに挨拶をして、私は会社を出た。
いつものように迎えに来たザクロと一緒に、駅前のスーパーに向かう。店の中はどこもクリスマスの飾りで、赤と緑と金色に彩られていた。
目当てはスパークリングワイン。クリスマス用にディスプレイされた陳列棚から、私は一番上の段にある黄色いラベルの張られた瓶を手に取った。
シャンパーニュの有名銘柄、ヴーヴ・クリコのイエローラベル。ちょっと高いけど、こんな時でもなければ飲む機会はないような気がする。
ザクロのディナーに合わせて、一緒に飲んでみよう。
私は迷わずヴーヴ・クリコを買って店を出た。