過保護な妖執事と同居しています!
家に帰ると玄関にはすでに、いい匂いが漂っている。思わず頬がゆるみ、同時にお腹は鳴った。
「すぐ食事になさいますか?」
「うん。着替えるから少し待ってね。あと、お皿は二人分用意して。ザクロも一緒に食べよう」
「かしこまりました」
ザクロを玄関脇のキッチンに残して、私は奥の部屋に駆け込み急いで部屋着に着替える。そして食卓にもうひとつイスを用意した。
買ってきたワインを開けてグラスに注ぐ。本当はフルートグラスの方が泡がきれいに立つんだけど、うちには普通のワイングラスしかない。
ワイングラスをそれぞれセッティングしたとき、あまり広くないテーブルにとりあえず前菜が運ばれてきた。
「ジャガイモのポタージュと白身魚のカルパッチョです」
私はイスに腰掛けて、ワインを一口飲む。やっぱり本物のシャンパーニュは辛口でさっぱりしている。
おいしいけど、もったいないので一気に飲むのはやめよう。この間のように酔っぱらったら恥ずかしい。あの後、そのまま眠ってしまった私を、ザクロがベッドまで運んで寝かせてくれたらしいのだ。
私はグラスを置いて料理に手をつける。
白いスープの表面には生クリームで丸く円が描かれ、真ん中にパセリのみじん切りが散らしてある。コンソメ風味のスープはすりつぶしたジャガイモとみじん切りにしたタマネギがトロリとして舌触りがいい。
カルパッチョの皿は、中央にスライスした紫タマネギと赤や黄色のパプリカが盛りつけられ、その周りに薄くスライスした白身魚が整然と並べられ塩とオリーブオイルにバルサミコ酢で味付けされていた。皿の隅にはまるでバラの花のようにデコレーションされたスモークサーモンも添えられている。
崩すのが惜しいけど、やっぱり食べたい。私はふたつの皿にカルパッチョを取り分けて、ザクロを促した。
「ザクロも食べて」
「はい。いただきます」
にっこり笑ってザクロも席につき、ワインを口にした。
「発泡性のぶどう酒ですか。さわやかでおいしいですね」
そう言ってザクロはもう一口ワインを飲む。どうやらシャンパーニュが気に入ったようだ。