過保護な妖執事と同居しています!


 少ししてふたつの皿を持ったザクロが戻ってきた。


「ローストビーフです」


 目の前に置かれた皿には、真ん中にスライスしたミディアムレアのローストビーフが数枚盛りつけられ、ジャガイモと赤や黄色のパプリカが添えられていた。ビーフの上と皿の縁を飾るように、褐色のソースが垂らされている。

 ザクロが席に着くのを待って、私はナイフとフォークを手に取った。
 肉を切り分けソースを絡めて口に運ぶ。バルサミコ酢をベースにした少し酸味のあるソースがジューシーな肉汁と共に口の中に広がった。
 思わずフォークとナイフを握りしめてうなる。


「お肉おいしー」
「ありがとうございます」


 ザクロは嬉しそうに笑って、優雅に肉を口に運んだ。

 食べたものがどこに消えてるのかちょっと不思議。ザクロって元々食べないからトイレにも行かないんだよね。

 などと、どうでもいいことを考えながら、おいしい料理を存分に堪能する。
 食べ終わった食器を片付けて、ザクロはコーヒーを運んできた。


「ケーキはもう少し後になさいますか?」
「大丈夫。別腹だから」


 私が即答すると、ザクロはクスリと笑ってキッチンに引き返した。
 再び現れたザクロがテーブルの上に置いたケーキを見て、私のテンションは一気に跳ね上がる。


「ブッシュドノエルだーっ!」
「はい。代表的なクリスマスケーキだと指南書に書いてありましたので」


 代表的と言われていても、実は食べたことがない。実家にいる頃はいつも丸いケーキだったし、一人暮らしを始めてからはワンピースのショートケーキしか買わなかったから。


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