過保護な妖執事と同居しています!
ザクロの作ったブッシュドノエルはキャラメル色だ。直径十センチほどのロールケーキに小さなロールケーキの切り株が載って、キャラメル色のクリームで周りをコーティングされている。
木肌を模したシマシマの溝が刻まれたクリームの上には、イチゴとブルーベリーやラズベリーが並べられ、銀色のアラザンと雪のように粉砂糖が振りかけてあった。
ザクロが切り分けてくれたケーキの中心には、真っ白な生クリームの中にイチゴが丸ごと巻き込まれている。キャラメル色のクリームはモカクリームで、ほんのりとコーヒーの香りがした。
トッピングのイチゴと共にモカクリームの載ったふわふわのスポンジを口に含み、私は目を細める。
「相変わらず、ザクロの作ったケーキって絶品すぎる」
「ありがとうございます」
ザクロもケーキを食べながら、不思議そうに話しかけてきた。
「クリスマスってキリシタンのお祭りなんですね。国中でお祝いするようになってたのには驚きました」
いや、日本のクリスマスはキリシタンあんまり関係ないから。
絶品ケーキを食べ終わり、ワイングラスを傾けながら、私は大きくため息をもらした。
「はぁ〜満足。すごくおいしかった。ザクロ、ありがとう」
「どういたしまして」
「ザクロってどこかのレストランでコックさんになれるよね」
「コックさん?」
「料理人のこと。ザクロがいるお店なら本郷さんを連れて行ってあげるのにな」
ふたりきりはないけど。
「本郷さんって、この間一緒に食事をした人ですか?」
「うん。何度か食事に誘われたんだけどね。ふたりきりだと気まずくて、ずっと断ってたの」
「迷惑してるんですか?」
あれ? なんかザクロ、声が低い。目が据わってる?
「迷惑じゃないけど、何度も誘ってくれるのに断ってばかりでちょっと悪いかなぁって思ってて」
私がためらいがちに言い訳をすると、ザクロはあっさり引き下がった。
「そうですか」
なんだか微妙な空気を追い払うように、私はザクロにワインの瓶を差し出した。
「飲もう。これ、明日まで置いたら気が抜けちゃうから」
「はい。でも頼子は明日も仕事ですよね? あまり飲み過ぎないように気をつけてくださいね」
「うん」
笑顔の戻ったザクロと一緒に、私は高級シャンパーニュを存分に味わった。