過保護な妖執事と同居しています!
「頼子、そろそろお目覚めください」
元日の早朝、まだ暗い部屋でザクロの声が密かに囁く。私はごそごそと布団から這いだした。
どうやら日の出は見られるらしい。雨や雪が降ったり雲が多すぎたりしたら見られないので、眠らないザクロがあらかじめ確認してくれたのだ。
「寒いのでしっかり着込んでくださいね。私は外でお待ちしています」
そう言ってザクロは姿を消した。私は夜のうちに用意しておいた服を着込み、靴を持ってそっと窓を開ける。窓の外にはザクロが立っていた。
部屋の中は真っ暗だったが、すでに空が白み始めているのがわかる。
ザクロの手を借りて窓からこっそり外に出る。私が靴を履いたのを見届けて、ザクロは背中を向けてしゃがんだ。
私を背負ったザクロは一気に空高く舞い上がる。そして林の上を滑るように、山頂へ向かって進んだ。
はるか彼方に見える青黒かった稜線が、次第に紅を帯びてくる。空も藍から紫、紅に染まっていく。
私たちが山頂にたどり着いたときには、遠くの山並みと山の上にかかる薄い雲が、目映いオレンジ色に変わっていた。
やがて稜線の向こうに姿を現した大きくて眩しいオレンジ色の太陽は、雲を貫くように光を放ち、麓の町も畑もオレンジ色に染めていく。
あまりの眩しさに目を逸らすと、隣にいるザクロの顔もオレンジ色に染まっていた。
「きれいだね」
「はい」
ザクロも眩しそうに目を細めながら、こちらを向いて微笑む。
「私、年を取ったら、またここに住もうかな」
「私もご一緒していいですか?」
「当たり前じゃない」
ここで私が人生の終わりを迎えたら、ザクロはまた山に帰れる。また長い間眠ることになっても、住み慣れた故郷の方がいいよね。
その頃にもう一度、この景色が見られたらいいな。