過保護な妖執事と同居しています!


 駅の構内が見えてきたとき、チラシを配っている小さな女の子が目に入った。五歳くらいだろうか。髪をふたつに分けて三つ編みにしている。
 少し離れたところに同じチラシを配っている女性がいた。どことなく女の子と似ているので親子かもしれない。

 あまりチラシをもらってくれる人はいないようだ。

 そばを通り過ぎようとした私に、女の子がチラシを差し出した。


「お願いします」
「ありがとう」


 私は笑顔でチラシを受け取り、そのまま駅の構内に入って行く。チラシはどうやら宗教団体の宣伝らしい。
 改札口に向かっていると、後ろからザクロがおずおずと声をかけた。


「あの、頼子……」


 振り返ると、ザクロは困ったような表情で足元に視線を落とす。その視線をたどれば、私のすぐうしろに先ほどの女の子が、自分の体と同じくらいはある段ボール箱をかかえて立っていた。

 女の子は私に箱を差し出して機械的に言う。


「寄付お願いします」


 途端に怒りがこみ上げてきた。この子に対してではなく、さっき見た女に対して。
 私は身を屈めて女の子の前にチラシを突きつける。


「これをもらったら寄付しないといけないの?」


 こんな場合はどうすればいいのか教わっていないのだろう。女の子は困ったように私を見つめる。


「だったら返す」


 そう言って私は、女の子の持った箱の上にチラシを置いて踵を返した。
 まだ追いかけて来るだろうか。少し振り返ってみる。女の子はその場に呆然と立ち尽くしていた。



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