過保護な妖執事と同居しています!
「他にご用は?」
「あなたに頼みたい用事はないから、もう山に帰っていいわ」
「それはできません」
間髪入れずに断られて、私はついつい声を荒げる。
「なんで!? なんなりとお申し付けくださいって言ったじゃない!」
「私はあなたの生気を糧に生きています。あなたから離れては生きていけません」
あっさりと妖怪っぽい事を言われて私は頭を抱えた。
「生気って何——っ!? いつから——っ!? どうやって!?」
「生気とは生命の源になるものです。あなたが私に触れた時から、あなたと私の命はひとつに繋がりました。あなたのそばにいるだけで、私は生気を受け取ることができます」
これって、この妖怪に取り憑かれたって事? しかも一生そばにいるって事? てことは、私は今後、会社にも行けないし、結婚もできないし、まともな社会生活が送れないって事では……。
私が人生に絶望していると、それを察したように妖怪はにっこり笑った。
「ご心配なく。私の姿は一般の人には見えません」
「もしかして私の考えてる事がわかるの?」
「いいえ。これまでの人がそれを気にしていましたから」
なるほど、そういう事か。そりゃあ気になるだろう。とりあえず対外的には今までと変わりないという事なのでホッとした。
生気を勝手に奪われているという実感はないが、命が繋がっているというのがどういう状態なのかよくわからない。
「私が死んだら、あなたも死ぬの?」
「私は死にません。また眠りにつくだけです」
ということは、こいつが死んだから私も死ぬというとばっちりはないという事らしい。