過保護な妖執事と同居しています!


 ザクロに見捨てられたような気がして、私は俯いて力なくつぶやく。


「そんなこと言わないでよ」


 じわりと涙がにじんできた。

 やばっ。私が沈んでるとザクロがおなかを空かせちゃう。ご飯を食べて元気にならなきゃ。

 涙を拭って顔を上げたとき、私はザクロの腕の中に抱きしめられていた。彼に抱きしめられたのは初めてじゃないのに、体は硬直し、鼓動は徐々に早くなる。

 ザクロはさらにきつく抱きしめ、耳元で絞り出すように言った。


「申し訳ありません。幸せにするどころか泣かせてしまうなんて」


 いや、そんな盛大に謝ることでもないから。むしろ私の方がザクロを傷つけたんだし。


「あ、あの、ザクロ、ちょっと苦しい」


 私の声にハッとしたように、ザクロは慌てて腕をほどく。そして気まずそうに目を逸らした。


「し、失礼しました」


 あれ? なんか動揺してる。いつも落ち着いてるザクロにしては珍しい。
 少し顔が赤い。もしかして照れてるの?

 そう気付いた途端、せっかく収まりかけていた鼓動が再び早くなってきた。
 やだ。私までドキドキしてきちゃった。

 奇妙な空気を追い払うように、私はザクロを促した。


「お、おなか空いちゃった。ごはんできた?」
「すぐご用意いたします」


 そう言ってザクロはそそくさとキッチンに姿を消した。

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