過保護な妖執事と同居しています!


 今日は始業前に軽く疲れたというのに、業後も営業部の飲み会で会社の人たちとつき合わなければならない。

 年始は忙しくて人が集まらないので、いつもこの時期に新年会を兼ねた飲み会があるのだ。今年はたまたま、それに週末とバレンタインデーが重なってしまった。

 ザクロに買った物理的に重いプレゼントがあるので、本当はさっさと帰りたいところなんだけどな。

 渋々参加した飲み会で、私は会費の元を取るべくしっかり食べた。まだバレンタインミッションはザクロが残っているので、酔いつぶれるわけにはいかない。飲むのはかなりセーブした。

 九時に飲み会がお開きになり、私は誰かに捕まる前に帰ろうと、真っ先に店を出る。外ではザクロが待っていた。

 いつものようにザクロを従えて帰ろうとしたとき、後ろから肩をたたかれた。

 しまった! 二次会なんか行くつもりないのに。

 適当な言い訳を頭の中に用意して振り向くと、少し顔を赤くした坂井くんがにこにこしながら立っていた。

 意外。なんなんだろう。


「海棠さん、帰るんですよね? 途中まで一緒してもいいですか?」
「あ、うん」


 益々意外。私はてっきり坂井くんには煙たがられていると思ってたのに。

 二人で並んで歩き始めたものの、会話が全くない。そもそも坂井くんと雑談なんてしたことないから、何を話題にしていいかわからない。後ろにザクロがいるのも手伝って、ものすごく気まずい。

 さすがに坂井くんも気まずかったのか、少しして遠慮がちに話しかけてきた。


「あの、チョコレートありがとうございました」
「あぁ、うん」


 今頃? まぁ、いいけど。


「お礼が遅くなってすみません。まさか海棠さんから本命チョコをもらうとは思わなかったから驚いちゃって」
「はい!?」


 ちょっと待て! 思う存分悩むがいいとは思ったけど、なんでそんなあさっての方に結論が飛躍しちゃったのよ。こっちが驚いちゃったわ。


「義理じゃないなら本命ですよね?」


 あさってじゃなくて単純すぎただけか。本命チョコなら、みんなが見てる前で堂々と渡すわけないじゃない。少し考えればわかるでしょう。私もそのくらいの恥じらいはある。

 結局説明する羽目になるのね。

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