過保護な妖執事と同居しています!
賑やかな飲み屋街を一緒に歩きながら、手にした荷物の重さにふと閃いた。
今姿が見えているならちょうどいい。重くてしょうがなかったプレゼントを渡してしまおう。
私は持っていたデパートの紙袋をザクロに差し出した。
「はい。ザクロにバレンタインのプレゼント」
「プレゼントって、私に贈り物ですか?」
「うん。日ごろの感謝を込めて」
「ありがとうございます」
笑顔で受け取ったザクロは、袋の重さに驚いたようだ。
「ずいぶん重いものなんですね」
「開けてみて」
ザクロは立ち止まって紙袋の中から箱を取り出す。カステラでも入っていそうな長方形の箱は、赤い小さなハートが散りばめられたピンク色の包装紙で包まれていた。
包装紙を丁寧に剥がして、箱のふたを取ったザクロは笑みを浮かべる。気に入ってもらえたってことかな?
箱の中には砥石が入っていた。基本的に食べないザクロに食べ物をあげても無意味だし、着るものも魔法のように出しちゃうからわざわざプレゼントするのも虚しいし。だから実用に特化して考えた結果、こうなった。
いつもおいしいごはんを作ってくれるザクロは料理人だから、料理人の魂とも言える包丁をいつも快適に使ってもらいたい。
私が持っている包丁研ぎは、初心者向けの簡易なものなので、プロ仕様の砥石を選んでみたのだ。
「ありがとうございます」
改めて礼を述べ、ザクロは箱を袋の中に納めた。
「砥石で包丁を研いだことある?」
「包丁はありませんが、刀なら研いだことありますよ」
「刀……」
どうやら持ち腐れる心配はないらしい。
再び歩き始めた私は、後ろに従おうとするザクロの横に並んだ。
「ねぇ、今日はみんなに姿を見せたまま家まで帰ろうよ」
「かしこまりました」
私はザクロの腕に自分の腕を絡ませる。ザクロが少し驚いたように私を見下ろした。
「今日は恋人たちを祝福する日なの。私たちも祝福されるように恋人たちのフリしよう」
「はい」
にっこり笑ってザクロは頷く。そして恋人たちのように寄り添いながら駅に向かった。