過保護な妖執事と同居しています!
もうすぐ日付が変わろうという頃、お酒をつぎ足そうとした私のグラスをザクロがそっと奪った。
「頼子、あまり飲み過ぎない方がいいですよ」
そんなに飲み過ぎてないけど? 全然酔ってないし。楽しい時間に水を差されたようで、私は少しムッとしながらグラスを奪い返した。
「あと少しくらい平気よ。明日は休みなんだし」
「ご自身ではあまりご存じないようですが、頼子はあまり酒に強くありません。まだ大丈夫と思えるうちにやめておいた方がいいと思います」
「なんかザクロお母さんみたい」
「お母さんだったこともありますので」
「え……」
そういえば女の姿になったこともあるって言ってたっけ。小さい女の子に繭を触られたのかな。
それはともかく、全然酔ってないし、あと少しでお酒もなくなるんだから、それを片付けるくらいいいじゃないかと思う。
相変わらず心配性なザクロの気を逸らすために、私はちょっと駄々をこねてみた。
「お母さんはイヤ。今日は恋人たちの日なんだから、恋人っぽくしてて」
「恋人っぽく、ですか?」
よし。気は逸らせた。少し俯いて考え込んだザクロの目を盗み、私はこっそりお酒をつぎ足す。
ちびちびとお酒を舐めながら、ザクロがどんな風に恋人っぽくするつもりなのかじっと見守った。
まさかいきなり押し倒したりはしないよね。だってザクロは紳士だし。いや、なんの根拠もないけど。