過保護な妖執事と同居しています!
「どうしてそんなこと言うの? ずっと一緒にいてくれるって約束したじゃない」
「申し訳ありません。私は罪を犯してしまいました。これ以上お嬢様のおそばに仕えることはできません」
ザクロは目を伏せて辛そうにつぶやく。うーん。迫真の演技。さすがに主の望む姿を演じ続けてきただけのことはある。
「罪ってなんのこと? 私との約束を破ることは罪じゃないの?」
ザクロは顔を上げて悲しそうに微笑んだ。
「あなたの幸せを心よりお祈りいたします。けれど私以外の誰かとあなたが幸せになっていく姿をそばで見ていることは辛くてできそうもありません。どうか私の罪をお許しください。そして私のことはお忘れください」
「ロベール」
私はザクロに歩み寄り、その胸にすがった。ザクロは私の両肩に手を置く。
「いけません、お嬢様」
「あなたの想いが罪だというなら、私も共に背負います。ずっとあなたが好きでした。聞かせてください。あなたの罪を」
見上げた私を見つめながら、ザクロの腕がゆっくりと背中に回り、私を抱きしめた。次第に顔が近づいてくる。私は静かに目を閉じた。
「あなたを愛しています、お嬢様」
「お嬢様はイヤ。名前を呼んで」
「頼子……」
え?
私は目を開き、ザクロの胸を軽く突き放す。口元に少し笑みを浮かべてザクロを見上げた。
「よく覚えてるのね」
「頼子の好きな書物ですから、何度も読みました」
いつものザクロだ。にっこり笑って何事もなかったかのようにあっさりと腕をほどく。私もにっこりと微笑み返した。