過保護な妖執事と同居しています!
幸せなお弁当の時間が終了し、午後の始業を告げるチャイムが鳴る。私は鞄を持って行き先掲示板の前に立った。
私の主な仕事は営業事務だが、一応営業部にいるのでたまに外回りに出ることもある。といっても営業成績にノルマがあってボーナスの査定に響いたりというようなシビアなものではない。
挨拶がてら昔からの安定した得意先を定期的に回って、パンフレットや書類の収受を行うという、いわばご用聞きのようなものだ。
掲示板に行き先と帰社時間を書き込んでいると、向こうから本郷さんがやって来た。
「海棠、オレも出る。車で行くから途中まで乗せてってやるぞ」
「ありがとうございます」
電話番を坂井くんに頼んで、私は本郷さんと一緒に会社を出た。
ビルの裏口から一緒に出て、私をそこに残し本郷さんは隣の立体駐車場に向かう。程なく目の前に社用車がやって来て止まった。
私は頭を下げて助手席に乗り込む。私がシートベルトを締めるのを見届けて、本郷さんは車を発進させた。
ビルの裏の狭い道を少し走って、表の広い国道に抜ける。少しして本郷さんがおもしろそうに尋ねてきた。
「海棠、おまえいつからお嬢様になったんだ?」
「え?」
「昼に坂井から聞いたんだ。おまえの執事と名乗る男に会ったって。オレも会ったことがある」
坂井くんは本郷さんには懐いているようで、時々昼ご飯を一緒に食べに行ったりしている。本郷さんは私よりあとから課に配属されたのに、男同士って気楽だからかな。