過保護な妖執事と同居しています!
ザクロのことは坂井くんから追及されるのではないかと予想はしていた。まさか本郷さん経由で追及されるとは思わなかったけど。
私は苦笑に顔をひきつらせながら、用意しておいた言い訳を口にする。
「あ、あの人は私の親戚で、執事喫茶で働いてるからあんな格好してるんです。一人暮らしをしている私を心配した親から時々様子を見てくれって頼まれて、使命感に燃えちゃってて」
「そうか」
一応納得したのか、本郷さんは小さく頷いた。私はホッとして密かに胸をなで下ろす。その直後、本郷さんは独り言のようにつぶやいた。
「彼は本当におまえの血縁なのか?」
「え?」
私の言動になにかおかしなところでもあっただろうか?
「なんか人間離れしているなと思って」
「人間離れ?」
ザクロの容姿? 確かにあの鮮やかな赤毛と赤い瞳は人間離れしているかもしれないけど、カツラとカラーコンタクトでなんとかなる。
ザクロは本郷さんの前でしゃべっていないし、ただ私のそばに立っていただけだ。
他の人には見えていなかったことを本郷さんは気付いていたの? だとしたらどうやって?
そこまで考えてピンときた。
もしかして、私が知らない間にザクロはひとりで本郷さんに会っていた?
私が会社にいる時や、眠っている間やお風呂に入っている時、ザクロが何をしているのか私は知らない。
家事をしたりテレビを見たりしているとは聞いているが、瞬時に移動できるザクロはどこかに行って帰ってくるなんてあっという間だろう。
なんのために本郷さんに会いに行ったのかはなんとなく想像がつく。
クリスマスイヴの夜、本郷さんの話をしたらザクロは不機嫌になった。私が本郷さんに迷惑をかけられていると思ったのだろう。
そんなことを考え込んでしまった私は険しい表情をしていたのかもしれない。本郷さんが気遣うように謝った。
「いや、おまえの親戚を悪く言うつもりはなかったんだ。すまない」
「いえ」
笑顔で返事をしたものの、心はすぐ上の空になった。帰ったらザクロに問い質さないと。