過保護な妖執事と同居しています!
「頼子、何を怒っているんですか?」
迎えにきたザクロが、帰る道すがら何度も尋ねる。
坂井くんがよく働いてくれるようになって、私も今までよりずいぶんと早く帰るようになった。帰り道にはまだ人がたくさんいるので、姿を消しているザクロには迂闊に話しかけられない。
それもあるが、歩きながら話すようなことではないので、私は黙って家路を急いだ。
「何を怒っているのか教えてください」
玄関を入った途端、ザクロは再び尋ねる。なにか焦っているのか、いつもの恭しい執事挨拶も忘れているようだ。
私はまっすぐに奥の部屋を指さした。
「話すから、向こうに行って」
ザクロは黙って奥の部屋に向かい、私もそのあとに続く。部屋に入った私は、所在なげに佇むザクロに、床を指さした。
「ザクロ、そこに座りなさい」
ザクロは素直に正座する。床に正座している執事というのもシュールだ。
私はザクロの前でベッドに腰掛けた。少し身を乗り出して、ザクロの顔をまっすぐ見つめる。
「どうして私との約束を破ったの?」
「約束?」
まだわけが分からないと言った表情で、ザクロは首を傾げる。
「本郷さんに会いに行ったの?」
ようやく理解したのか、ザクロは落ち着いた様子で淡々と答えた。
「はい」