過保護な妖執事と同居しています!
ザクロは私に何から何まで報告したりはしないが、聞けばなんでも素直に答える。ウソをついたことはない。だから言ってることは本当なのだろう。
「会社のことには手出ししないって約束したでしょう?」
「職場の仕事に関することは黙認しています。頼子を食事に誘うことが彼の仕事なんですか?」
「そうじゃないけど、本郷さんは私がお世話になってる上司なの。私のことで彼がイヤな思いをしたら仕事での人間関係にも影響するのよ」
「よくわかりません。頼子がイヤな思いをするわけじゃないでしょう?」
こういう話をするといつもザクロとはかみ合わない。妖怪には他人の痛みは他人のもので、自分の痛みではないという認識なのだろう。
これ以上言い合ってもおそらく平行線をたどるので、私は質問を変えた。
「本郷さんに何したの?」
「頼子を困らせないでくださいとお願いしました」
言葉で話しただけじゃないと思う。でなければ「人間離れしている」なんて思わない。
「私にも同じことをしてみて」
「それはできません」
やっぱり思った通りだ。人殺しはするなと言ってあるから、命を奪うことはしなかっただけで、何か妖力を使って本郷さんを脅したのだろう。
「私にはできないようなことを本郷さんにしたのね?」
「……はい」
叱られた子供のように力なく俯いているけれど、ザクロにはなぜ叱られているのかわかってはいないようだ。
人のふりをする妖怪なのに、人の心や価値観を理解していない。
ザクロがいつからこの世にいるのかわからないけれど、これまでの宿主たちはザクロにそれを教えなかったのだろうか。
宿主の望む姿で、宿主の言うことをなんでも聞く。ただそれだけを繰り返してきたのかな。