過保護な妖執事と同居しています!
「本郷さんから結婚を前提につきあってほしいって言われたの」
「そうですか」
あれ? 無反応?
鏡越しに見るザクロの表情はいたって穏やかだ。
「結婚したら辞めなきゃならないんですか?」
「いや、そうじゃないけど。夫婦で同じ部署にはいられなくなるから……って、それはともかく! ザクロは私が結婚してもいいの?」
ザクロは柔らかな笑みを浮かべて即答する。
「頼子が幸せになるなら、私は祝福しますよ」
一瞬目の前が暗くなった。楔を打ち込まれたかのように胸がズキンと痛くなる。
私の痛みは通じているはずなのに、ザクロは平然と続ける。
「本郷さんなら頼子を大切にしてくれるでしょう。彼は私の力を目の当たりにしても、ひるむことなく反撃してきました。いざというときに必ず頼子を守ってくれるはずです」
「え……」
何かやらかしたんだろうとは推測していたけど、いったい本郷さんに何をしたんだろう。それも気になるけど、ザクロの祝福がこんなに痛いとは思わなかった。
ザクロへの想いは一方通行だとわかってたはずなのに。
タオルを鏡の前に置いて、ザクロはドライヤーを手にした。私の髪をかきあげながらスイッチを入れる。
「彼が頼子を幸せにしてくれるなら、私は——」
ザクロのつぶやきはドライヤーの音にかき消され、最後の方は聞き取れなかった。