過保護な妖執事と同居しています!
ようやく海棠に伝えることができた翌日、彼女は早速返事がしたいと言ってきた。
じっくり考えてくれと言ったのにあまりに早すぎる。ということは、すでに心は決まっていたのだろう。
なんとなくそんな予感はしていた。これまで彼女に警戒されていたことや、今回食事ではなくカフェを指定されたこともそれを裏付けている。
彼女の答えは予想がついても、直接聞いてけじめをつけたい。
オレは彼女より少し遅れて会社を出ると、彼女の指定したカフェへ向かった。
目的地について店内を見回す。海棠はすでに席についてコーヒーを飲んでいる。オレもコーヒーを買って彼女の席に向かった。
「悪い。待たせたか?」
「いいえ、さっき来たところです」
ありきたりの言葉を交わし、互いにコーヒーを一口すする。カップをテーブルに置いた直後、オレは唐突に切り出した。
「返事を聞かせてくれ」
海棠はひざに両手をついて深々と頭を下げる。そしてそのまま絞り出すように告げた。
「ごめんなさい、本郷さん。私、本郷さんの想いに応えることはできません。好きな人がいるんです」
「そうか。顔を上げてくれ」
予想はしていたからか、案外冷静に受け止めている自分に驚く。顔は上げたものの海棠は目を逸らしていた。
「あの執事か?」
「え?」
ようやくこちらを向いた目が、大きく見開かれている。
「おまえの好きな人」
「あ……」
海棠が照れくさそうに再び目を逸らした。
気付かれてないと思っていたのか? こっちはおまえばかり見てたんだ。
オレはおおげさにため息をつきながら椅子の背にもたれた。
「あーあ、また手遅れだったのか」
「また?」
きょとんと首を傾げる海棠を見つめながら、オレは少し笑みを浮かべて暴露した。
「三年前に、遠距離になると思ってためらってるうちにおまえに彼氏ができたって聞いたんだ」
「え……」
困ったように苦笑する海棠にくぎを刺す。
おまえの考えそうなことはお見通しだ。
「会社辞めるとか言うなよ。この上優秀な部下まで失いたくない。これからも仕事の上ではオレを支えて欲しい」
「あ……ありがとうございます」
海棠はまた深々と頭を下げた。