少女狂妄
「おじさん、も?」


 涙をぬぐって椅子に座る樹を見ると、樹は珍しく笑いもせず無表情だった。

 私を見返す目が冷たい。

 兄である日向さんを覚えていないように、私はおじさんのことも覚えていないんだろうか。

 名前を聞いたらそれがわかってしまうから、おじさんは今まで隠してくれていたの?


「もしかして……お父さん?」


 記憶に存在しない私のお父さん。

 私の兄である日向さんの目は、おじさんとよく似た色をしていた。

 日向さんと同じように、あえて他人のふりをしてくれていたのかもしれない。

 日向さんの名字がなんで時鳥じゃないのかわからないけど、おじさんの名前が時鳥だったら血縁関係は丸わかりだ。


「アイツは……人殺しだよ」


 ニヤリと樹が嗤った。
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