狂妄のアイリス
 細い少女の首に、女の手が回る。

 爪が柔らかな肌に食い込んで、少女の皮膚を削いでいく。

 生々しい赤色が少女の首筋を伝う。

 皮膚に爪を立てながら喉を絞め、真綿で絞めるよりも早く死を呼び寄せる。

 少女の口がようやく開き、空気を求めてあえぐ。

 初めて示した抵抗も首を絞められたために力が入らない。

 少女の手は、女の手に少し爪を立てただけだった。

 女の皮膚は、少し白く筋がついただけだ。

 目も見開かれて、少女の美しいグラデーションの瞳に女が映り込む。

 般若のような形相が、その虹彩に映ることによって更に険しくなる。

 首を絞める手に、より一層力が込められた。

 うめき声を上げる少女の顔は青黒く変色している。

 その時、玄関から物音が聞こえてきた。

 女の手が、一瞬緩む。


「ただいまー」


 青年の声がした。
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