少女狂妄
 チアノーゼを起した唇が歪んで、薄く開かれた緑の目が日向さんを見て嗤う。

 床に落ちた手が、首を絞めるために放置されたナイフをつかんでいた。

 ナイフが振り上げられ、日向さんの手から血が花びらみたいに散る。

 その痛みが、私にはありありと分かった。

 思わず首から手を離し、傷を手で押さえる。

 首を絞める手から解放された私が酸素を取り戻す。

 手を押さえてうずくまる日向さんから目を離さずに、私と同じ朱音の姿を借りた樹が立ち上がる。


「母親と同じ方法で朱音を殺そうなんて、いい趣味してるね。日向」


 あっ気に取られている日向さんを蹴り倒し、その上に馬乗りになる。


「無理心中なんかするぐらいなら、一人で死になよ」


 樹は構えたナイフを振り上げた。
< 177 / 187 >

この作品をシェア

pagetop