少女狂妄
 樹が日向さんを殺そうとしている。

 私の大好きだった日向さんを、私が殺そうとしている。

 日向さんが私を殺すか、私が日向さんを殺すか。

 もうそんな終わり方しか用意されていないの?

 誰が私と日向さんをこんな風にした?

 お母さんが、私と日向さんをこんな風にした。

 誰がお母さんをそんな風にした?

 おじさんが、お母さんがあんな風にした。

 そのおじさんは?

 誰が、おじさんをあんな風にした?

 虹彩異色症のおじさんを……

 その前は?

 更にその前は?

 どこまでさかのぼれば、罪の螺旋は消えていくんだろう。


「やめてええええっ!」


 そして今、私と日向さんも罪を重ねる。

 樹がナイフを振り下ろし、日向さんは抵抗もせずにただそれを見ていた。

 私の叫びは、いったい誰に届くというんだろう。

 私は顔を覆い、目を閉ざした。
< 178 / 187 >

この作品をシェア

pagetop