少女狂妄
 私は、ベッドから立ち上がろうとした。

 ベッドから下ろした足が、湿ったなにかを踏んで滑る。

 私は、ベッドから落ちるように尻もちをついた。

 フローリングに、赤い筋がつく。

 まるで絵具みたいな赤い色が、私が足を下ろしたところから今足がある所まで伸びている。

 足に絡みつく、湿ったなにか。

 それは、黒い布のように見えた。


「日向さんの、マフラー……」


 制服よりも大切に、それはクローゼットの奥に仕舞ってあったはずだった。

 それが何故か床の上に落ちていて、赤いなにかで湿っている。

 赤いなにかは、血の匂いがした。


「あぁ」


 全身の血の流れが、一瞬にして凍りつく。

 感嘆のようなうめきが、喉からもれる。

 ぐっしょりと濡れたマフラーは、闇のように真っ黒だった。
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