少女狂妄
 白い病室。

 飛び降りないようにはめられた格子。

 点滴の管が入った腕。

 カーテンレールで首を吊るからとひも状の物は取り上げられた。

 溜め込んだ薬を一気飲み。

 刃物を取り上げられても、奪い取る。

 傷だらけの首。

 噴出した血液。

 真っ赤に染まった天井。


「――それは、本当に蛍の記憶?」


 耳に届いた声は、私の物でも樹の物でもない気がした。

 頭の中で、クスクスと笑い声がする。

 今度は、樹だとはっきりとわかった。

 初めて樹と出会ったのも、あの日々の中だった。


「僕の目を、本当に知らない?」


 とても綺麗な目。


「今度、じっくり見て見るといい」


 ダークグリーンと琥珀の、日本人離れした虹彩。


「愛しいおじさんとやらの、恋しい日向も」


 蒼い目をしたおじさん。

 日向さんの瞳の色は、なに色だったろう。


「そしたら、蛍にもわかるよ。ホントのコトが」
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