少女狂妄
 私の知らない本当の事。

 それを私は知りたいんだろうか。

 私の目は、何色だった?

 樹の言う真実が恐ろしくてたまらない。

 どうして、こんなことになってしまったんだろう。

 家族が殺されて、自殺未遂を繰り返して、おじさんに出会ってやっと平穏を取り戻したはずだったのに。

 一年の節目が、心をかき乱す。


「それが、蛍の選択?」

「うん。そ、だよ……」


 私は、ゆっくりとカッターナイフを握り直す。

 切っ先が顔を向く。

 薄い刃先と目が合う。

 それを見つめながら、焦点が合わなくなるまで近づける。

 焦点が合わなくなっても、尚。

 私は、自分の瞳に向かって刃を突き付ける。


「あああああああああ!」


 絶叫と共に、赤い涙が零れ落ちた。
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