可愛くないって言わないで!!
「もしかしてさあ。この間の下見も、わざと小津くんに行かせたの?」
「うん……ごめん。わたしも小津くんに助けられてきたから、断れなかった」
申し訳なさそうに沙弥が頭を下げる。
そっかあ。
うーん。
とりあえず、小津くん一発殴っとこう。
「事情はわかったよ。沙弥は清水先生への気持ちを隠したかった。それとコウにもう大丈夫だって思ってほしくて、小津くんつ付き合い始めたフリをしたってことでいい?」
「うん。それで合ってる」
「よし。じゃあ沙弥。顔上げて」
「え」
パチン!
軽い音が、静かな進路指導室に響いた。
沙弥が目を見開いて、頬を押さえる。
綺麗な沙弥の顔を、叩いてしまった。
軽くだけど。
でもコウが追った心の痛みに比べれば。
これは沙弥を叩けないコウの代わりに、あたしがやらなきゃいけなかった。