可愛くないって言わないで!!


「あたしでさえ、下見のことで嘘つかれてたって知ってちょっと傷ついた」


「ごめんなさい……」


「それは別にもういいけど。コウは絶対、あたしよりずっとずっと傷ついたよ」




震える沙弥の白い手を、そっと握る。



沙弥は泣いていた。


ぽろぽろぽろぽろ、涙を流して泣いていた。




泣いていいんだよ。


無理して笑ってなくていいんだよ。



無理されたら、あたしもコウもつらいよ。



泣いてたらなぐさめるから。


一緒になって泣けるから。




だからもう、嘘なんてつかないで。



そのままの沙弥でいてよ。





「帰ったら……光太郎に、ちゃんと話す」


「うん」


「それで、ちゃんと謝る」


「うん」




涙の止まらない沙弥を抱きしめた。




沙弥の片想い、応援するよ。



そう囁いたら、少しだけ、笑顔を見せてくれた。









< 201 / 289 >

この作品をシェア

pagetop