可愛くないって言わないで!!


清水先生は困ったような顔ををして、


あたしの頭を優しくなでた。



「落ち着け。お前たちが卒業するまではいる」


「でも……辞めるんだ?」


「ああ。誰にも言うなよ」


「転勤? 次の学校決まってるの?」


「転勤じゃない。教師を辞めるんだ」




教師を辞める?


先生じゃなくなっちゃうの?




「な、なんで? 先生って大変なの? しんどくなったの?」


「ちがうちがう。そうじゃない。俺も辞めるつもりなんてなかったんだけどな……」




先生は、お父さんの会社を継ぐらしい。



本当はずっと教師を続けるつもりだったけど、お父さんが今年病気になって考えを変えたって話してくれた。



引っ越しもしちゃうんだって。




春になったら、清水先生はこの学校からも、この街からもいなくなる。


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