可愛くないって言わないで!!
「わ、わかりました! 優勝者は好きな相手とほっぺにちゅーで!」
「よし! ありがと! じゃああたしも参加でよろしく!」
「はい! こちらこそ参加を決めていただいてありがとうございます!」
男の子はぴょんぴょん跳ねながら去っていった。
これで舞台は整った。
あとは役者が舞台にあがるだけだ。
「おい」
「ん? あ、コウ」
「お前、いまのなんだよ。ほっぺにちゅーって」
ぶっすーっとした顔で、コウがあたしを見降ろしていた。
なにそんな怒ってんの?
あ! っていうか沙弥!
「沙弥! ちょっと聞いてよ!」
「おい! 俺はムシか!」
「コウうるさい! あとで相手してあげるから!」
「いらねえよ!」
ぎゃあぎゃあわめくコウを置いて、沙弥に駆け寄る。
沙弥の細い両手をぐっと握って、顔を近づけた。