可愛くないって言わないで!!
「真衣?」
戸惑う沙弥の耳元に囁く。
「清水先生、教師辞めるんだって」
ぴくりと、沙弥の手が震えた。
黒い宝石みたいな瞳が見開かれて、
信じられないって顔であたしを見る。
「春で、先生もこの学校からいなくなっちゃうって。だからこれが最後の文化祭になるんだって」
「なん、で……」
「お父さんの会社継ぐって言ってたよ。引っ越すからこの街からもいなくなっちゃう。さっき職員室で先生たちが話してたの聞いちゃって、清水先生本人に確認したんだ」
「うそ……」
「嘘じゃない。時間がないんだよ、沙弥。このまま自分の気持ち抑えて卒業したら、もうきっと一生先生に会えないよ?」
それでいいの?
沙弥は震えながらあたしを見つめて、
それでもしっかり、首を横に振った。