可愛くないって言わないで!!


「あ! ちょ、おま……っ」



反応のノロいコウにじれて、

あたしはコウの制服のポケットに手を突っ込んだ。


コウが悲鳴じみた声をあげる。



胸ポケットにはない!

じゃあズボン!


右は、ない。左もない。


お尻……あった!




「真衣! お前は痴女か!」


「うっさい! 鍵借りるから!」


「こら、待て!」




説明なんてしてるヒマないし!


あたしはふたりを置いて駆けだした。


人ごみを縫うように走って、玄関に。



外靴に履き替えたところで、コウが追いかけてきた。



「真衣! 待てっての!」


「待てない! コウに構ってるヒマないの!」


「いいから待て! なんか知らねえけど小学校行くんだろ!? 送ってやる!」



え、送るって……。



コウもさっさと外靴に履きかえて、あたしの手を引いて外へ出た。

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