可愛くないって言わないで!!
今日はまた一段と暑い。
でも暑さにひるんでる場合じゃなかった。
「どこ小だよ?」
駐輪場で、銀色の自転車の鍵を外しながらコウが聞いてくる。
ほんとに送ってくれるつもりなんだ。
「明野小学校……」
「ん。15分もありゃ着くだろ」
「いいの? 文化祭の最中なのに」
「お前もだろ!」
そりゃそうなんだけど。
笑うコウにつられて、あたしも笑った。
笑いながら、コウの自転車の後ろに飛び乗る。
「よし、コウ! 全速前進!」
「お前! 乗ってるだけのくせに偉そうだな!」
「いいから急ぐ!」
「わーったよ!」
ぶつぶつ言うコウの腰に、しっかりつかまる。
走り出す銀色の自転車。
暑さはもう気にならなかった。
コウの体温。
コウの匂い。
コウの息づかい。
風を切って進むコウのすべてを感じながら、あたしは真子の小学校へと向かった。
自転車は早く、でも優しく、長い坂をくだっていった。