可愛くないって言わないで!!

大丈夫。


その気持ちをこめて、あたしは沙弥の細いてをぎゅっと握り返した。



沙弥。


沙弥が横にいると、あたしはいつもよりずっと強くなれるよ。



大切な友だちを支えるために、いくらでも。







「まずは第2位!」





ごくりと喉が鳴る。


沙弥の震えが伝わってくる。



お願い……!









「噂の絶えない美しい転校生! 3年2組、藤村真衣さん!」








や……っ!



隣りを見ると、沙弥は目を開けて、呆然としながらも前を向いていた。






「そして栄えある優勝者は、3年連続でこの方! 3年3組、桂木沙弥さーん!」






その瞬間、体育館が沸いた。


生徒たちの興奮する声が大きすぎて、耳がまともに音を拾えなくなったほど。



やったね、沙弥!


そう言ってるのに、隣りの沙弥の耳まで声が届かない。



だからもっともっと強く、沙弥の手を握った。


沙弥はまだ、正気に戻れていないような顔をしてるけど。

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