可愛くないって言わないで!!
「行ってらっしゃい、沙弥」
文化祭が終わった。
校舎がオレンジ色に染まって、生徒がみんな下校したあと。
あたしと沙弥、そしてコウと小津くんはまだ教室に残っていた。
「真衣……ありがとう」
はにかんで、沙弥が歩き出す。
あたしたちは廊下に出て、沙弥の背中を見送った。
沙弥はこれから進路指導室に向かう。
あたしがこっそり、清水先生をそこに呼んでおいた。
拒否権はないからねって釘を刺しておいたけど、先生はうんともすんとも言わず、ひたすら沈黙していた。
「心配だなあ……」
「まあ大丈夫だろ。清水先生は空気の読める男だ」
「そんなに心配なら、こっそりのぞきに行ったら?」
「小津くん。それはないわ。マジ引く」
「いや、俺はのぞかないよ?」
「あとは沙弥次第だろ。俺たちは帰ろうぜ」