可愛くないって言わないで!!


どこか寂しそうに沙弥の背中を見送ってたくせに。



コウはわざとらしいほど軽く言って、くるりと玄関に向かって歩き出した。


あたしと小津くんも、遅れてそれに続く。




「ねえ、真衣」



小津くんが背をかがめて顔を寄せてきた。


ちょっと距離をとりつつ、何?と聞き返す。



「知ってた? 光太郎、ミスターになる為にすげー走り回ってたんだよ」


「え?」


「後輩に声かけまくって票集めたみたいだな。好きな奴に告白したいから、協力してくれって頭下げて回ったらしい」



信じられない気持ちで、前を行くコウの背中を見た。



コウ……そんなこと、してくれてたの?


あたしの為に、そこまで。




「後輩たちも光太郎をなんとしても優勝させてやりたいってはりきったみたいでさ。今日も保護者とか客に、光太郎をアピールしまくってたよ」


「だからステージで、人望で負けたって……」

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