可愛くないって言わないで!!


「……わたし、そんなに脚細くないから。このスカートの長さも、わりと気に入ってるの」


「ふうん……。それなら別にいいけど」



桂木沙弥の顔色はまだ悪い。

それでもあたしに笑顔を見せる。


ウソつきじゃん。

絶対なんかあるんでしょ?

言えばいいのに。


あたしに愛想ふりまいたって意味ないよ。



「沙弥……」


「じゃあ、わたし戻るね」


「桂木」



彼女は逃げるみたいに教室を出ていった。


それを少し遅れて、小津くんが追いかけていく。

島田光太郎は動かない。



「……なにあれ。傷ついてますーって顔。実は超あざとかったりして」



妙に居心地悪くて、それをごまかすように呟いた瞬間。


パン!

と小気味良い音と一緒に頬に衝撃を受けた。



「……は?」
< 45 / 289 >

この作品をシェア

pagetop