可愛くないって言わないで!!

日のあたらない階段に、先生の呟きが小さく響いた。



「ちょっと待ってよ。なにいまの。全然めでたくないじゃん」


「そうか?」


「そうだよ。だってそんなの……ムリがある」



女の子の方が、いつか絶対しんどくなる。


かりそめの平穏なんてめでたいわけない。


それに……



「それじゃあふたりが好き同士でも、幸せになれないよ」



だから桂木沙弥の彼氏が小津くんなんだろうか。


事故がなければ、幼なじみたちはとっくに恋人になってたのかな。



「その辺はまあ、うん。俺の目には、そういう感情はお互いなかったように見えたかな」


「先生って、ふたりのことよく知ってるんだね」


「ああ。1年の時のあいつらの担任、俺だったから」


「ふーん……」



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