可愛くないって言わないで!!



「ありがとう」




島田光太郎はなんとも似合わないマジメな顔して、

あたしを見つめそう言った。



真っ直ぐな、薄茶の瞳。


透きとおった、綺麗な目。




「……やめてよね。あんたにお礼とか言われる筋合いないし、キモチワルイ。暑いのに鳥肌立ったじゃん」


「お前なあ」


「なに。文句ある? ってゆーか、話しはそれだけ? もう帰っていい?」


「待った! 帰る前に、1発殴れ」


「はあ?」



殴れって、なにを?

島田光太郎を?



「暑さで頭沸いた?」


「マジメに言ってんの! お前の顔、叩いただろ。だから俺の顔、殴っていい」



ああ、そういうこと。


でもあたし、人殴ったことないし。

顔なんて殴ったら、か弱いあたしの手が折れちゃうかもしれないじゃん。

< 85 / 289 >

この作品をシェア

pagetop