可愛くないって言わないで!!
「暗黙の了解ってやつだ」
「痛いなあ! なに暗黙って! 誰も了解なんかしてないし!」
「はいはい。あんま目立ち過ぎるなよ?」
じんじん痛む頭を、今度は優しく撫でられた。
そのまま先生は教室に入っていく。
「わ。やば。もうHR始まるじゃん」
慌てて沙弥を見ると、
彼女はあの宝石みたいな瞳でじーっとあたしを見つめていた。
「さ、沙弥? どうしたの」
「……真衣は、強いね」
「え? なに、いきなり」
「かっこいい真衣が、うらやましくなる」
じゃあね。
沙弥はそう手を振り自分の教室に入っていく。
もういつもの沙弥の笑顔だったけど、
ほんの少し、元気がなく見えた気がした。