青い少女の
ゆうやけこやけ
図書館の終わりの時刻が迫った。
《間もなく閉館となります》
地味なアナウンスと階段を降る大人達の靴音が響いた。

泣きじゃくる子供の声もあった。

少しの喧騒の後、静けさが広がった。

少女はポツンと座っていた。
誰も居なくなったフロアを見回して立ち上がる。階段の反対側の奥には忙しそうな司書のメガネのおばさんが本を見つめながら無機質に仕分けている。

隠れるように階段に向かう。

階段を降る少女。

階段に映る少女の姿。
青いTシャツに濡れたような黒髪のコントラストがやけに映えて見えた。


少女が階段を降りきり、目線を上げると正面には広い出入口の自動ドアが待ち構えていた。

外はゆうやけ、少し暗くなりつつある。



外は赤く燃えているようで出たくなかった。
赤は嫌いだ。
頭の中まで暑くなる。目の奥から嫌なものが溶け出しそうだ。
我慢して熱気と湿気を浴び自転車に乗り、漕ぎ出した。
セルロイドのような肌からうぶ毛を伝い、汗が滲み始める。
横切る老婆の唇が夕日のせいか、やけに赤くて怖かったから私は急いで家まで帰った。

あの白い家が赤く泣いていた。
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