3つのR
1、秋、初対面


 少しずつ風がひんやりとしてきたなあと思いながら、飛んでいく雲を見ていた。

 

 その日は晴れていて、上空は風が強いみたいだった。雲が千切れてはビュンビュンとんでいき、ちゃんとした形なんて形成される暇がないようだ。

 そんなに急がなくてもいいのにね、ふとそんなことを思いながら空を見上げる。

 ・・・ゆっくり、ゆっくりでいいのに。

 首の後がいたくなって、苦笑を漏らした。

 6月頃から暑かった空気が漸くマシになりだした9月の最後、昼間はまだシャツ一枚だけで十分だけれども、夜には軽く羽織るものが欲しくなる、そんな季節だった。

 今年の夏は一度も倒れなかった。それが素敵だと思って、ちょっと久しぶりに遠出をしてみたのだ。一人で電車に乗って、2時間くらいの高原まで。ふわふわのフードがついたパーカーを着ていればちょうどいいくらいの涼しい空気を求めての外出だった。

 高原では早いコスモスが揺れているのをゆっくりと眺め、それから山道を歩いてその近所の大きな神社にお参りにいき、手づかずの深い緑の空気に飲み込まれそうになって帰ってきたばかりだった。

 太ももがだるい。こんなにちゃんと歩いたのは久しぶりだったから。


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